
番外編の第三弾です。
Tempest は Colosseum ファミリーの一バンドで、ヒープと同じブロンズレーベルに属するバンドでした。もともと、ジョン・ハイズマン(dr)が率いる猛者ぞろいのバンド、Coloseumがあったのですが、ここで後期にベースを弾いていたのがマーク・クラークで、同じく後期にギターを弾いていたデイブ・クレム・クレムソンと3人で、その二人ハイズマンが新バンドを画策したのがTempestです。
しかし、リハーサルの段階でクレムソンが脱退(理由はアンプの調子が悪いときに、ハイズマンと喧嘩をしたとか)し、代わりに見つけたのがあのアラン・ホールズワースです。
ジョン・ハイズマンは実は、オジー・オズボーンやグラハム・ボネットと同じく、ギタリスト発掘家としても有名です。Coloseum時代のクレムソン、Tempestの後に組むColoseum IIではゲイリー・ムーアと、一流の個性的なプレイヤーをその都度メンバーに迎えています。
Tempest時代は素晴らしく、初代がアラン・ホールズワース、そして本作2枚目ではオリー・ハルソールと、これまた二人ともすごいプレイヤーをギタリストに迎えます(しかも一時期は、その二人のツインギター!)。
セルフタイトルの一枚目は、シンガーとしてポール・ウィリアムスも在籍していたのですが、彼とアランが脱退し、オリーを向かえて本作を制作します。
やや難解で少し暗いイメージもあった1作目でしたが、本作はより洗練され、ポップに分かりやすくなっています。
おっと、そういえば本稿は Uriah Heep シリーズの番外編でしたね(笑)。なぜ Tempest なのかと言うと、ヒープの4枚目、Demons and wizards の時にほんの一時期だけ在籍したマーク・クラークが、なぜすぐにヒープを脱退してしまったかというと、このTempestの結成のためだったのです。
Coloseumが解散してヒープに加入しましたが、3ヶ月ほどでハイズマンに呼び戻されてしまったのです。
ヒープの歴史ではかなり影の薄いマーク・クラークですが、ここでは曲も書いてリード・ボーカルもとり、存在感を放っています。ハイズマンお気に入りのベーシストということもあり、ベースラインも豊かです。ハイズマンはかなり手数の多いドラマーですが、それに勝るとも劣らないベースプレイです。
3曲目のStargazer は、クラークの書いたポップな楽曲なのですが、この曲、後に彼がヘンズレイのソロアルバム作成に全面的に参加したときに取り上げられます(アルバム Eager to please)。こちらのほうが原曲で、まだ荒々しい感じがしますね。
というように、ヘンズレイとクラークは仲が良かったようです。ヒープでも、もっと長いことプレイしてほしかったものです。
このアルバムは、全般的にオリー・ハルソールが前面に出てきています。ギターはもちろん、楽曲によってはピアノやシンセもプレイし、マルチプレイヤーぶりを発揮しています。
しかしもちろん、彼の魅力はレフティのギタープレイにあるでしょう。ハイズマンのタイトなドラミングの上で、非常に個性的でスリリングなソロを聞かせてくれます。
このアルバム、テイチクの「ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・クラシックス」という、90年前後に出ていたシリーズで日本盤(おそらく世界で初CD化)が出ていたのですが、ほどなく廃盤となり、外盤でもなかなかCDにならず、すぐには聞けない時代が続いていました。
筆者がこのバンドを知った90年代後半はまさにその時期で、中古盤屋で見つけても、6000円くらいだったりと、プレミアがついていて、なかなか聞けずにいたのです。
しかしその後、日本でも海外でも再発が進み、ようやく普通に買って聞くことができるようになったのです。
その意味では、なかなか待たされた一枚でした。待たされた甲斐があって、なかなか良質の一枚です。
一枚目もありますが、全く質は異なるものの、あちらもあちらでなかなかの出来です。
マーク・クラークのファンというのもあまりいないかもしれませんが、ヒープファンならチェックしてみてください。